07 古代裂
語源は歴史上使われている古代ではなく、明治以降に古い布を扱った商人の間で交わされた、古代紫とか古代調という言葉の持つ意味と同じです。古い時代の織物の切れ端に便宜上使われた用語で「時代裂」とも言います。
私の家の箪笥にも、齢(よわい)百年は過ぎているであろう布たちが、静かに出番を待つようにして眠っています。京都は東寺の朝市で見つけよりぬいた品、友人たちから譲り受けたものなど、色々な出会いから集めたその味わいは、いずれも「古代裂」という言葉にふさわしい、誇りと気品すら感じられ、重圧感あふれる古布ばかりです。
なかでも私の心を虜にしたのが「ちりめん友禅」です。その神秘的に華やいだ色彩、掌にのせた感触の優しさは、独特な趣を持ち、まさに古代裂の王者といっても過言ではありません。色・柄のバランスは百年後の今日ですら、決して見劣りすることはなく、むしろ新鮮にさえ見えます。長い歴史を経て生き残ってきた布たちだけが持つまろやかな風合い、ちりめん特有のしぼの光沢の魅力にふれ、眺めるたびに生命あるかのように映り、まとっていた人の姿さえ見えてくるようで不思議な思いです。
「ちりめん友禅」は日本の素晴らしい遺産なのです。人形の着物として生き返らせることで、布も人形もお互いに調和し合って、格調高く色香を増すことでしょう。どんな小布でも今一度ライトをあてて、甦った命の喜びに心ゆくまで酔わせてあげたいのです。
古代裂