小池緋扇について

緋扇の思い出

緋扇の思い出タイトル

01 人形との出会い

私は小さい時から人形が大好きでした。ずいぶん贅沢に人形を与えてもらっていたのでよくお人形遊びをしたものです。小学校に入ってからは、洋裁や和裁の上手だった母に手伝ってもらい、ぬいぐるみのような人形をつくっては、妹と遊んでいました。

私が本格的な日本人形をつくったのは八十年前の小学校五年生の時。教員室で、数人の先生が趣味でつくられた日本人形を見て、その美しさに魅了されてしまったのです。好奇心旺盛な私はどうしても挑戦してみたくなり、担任の先生に夏休みの間教えていただくことになりました。そして八月の終わるころ、世界にひとつしかない私の「藤娘」がとうとう誕生したのです。私はもちろん、父母、兄妹の喜びはまるでお祭り騒ぎのようでした。ほほ笑みかけているような藤娘は、くる日もくる日も父の晩酌につきあい、一家に素晴らしい安らぎを与えてくれました。娘のつくった人形に満足しきった父の顔は、生涯忘れることはできません。

父はたいへんリッチで、母は美しくお洒落な女性でしたので、当時としては私たち姉妹をずいぶんとモダンに育ててくれた気がします。そしてそんな両親から受け継いだ感性も、私の人形づくりに大きな影響を与えたことに今は感謝しているのです。

小学校入学前小学校入学前
妹と人形遊びをしていたころ

小学校5年生のころ小学校5年生のころ

小学校3年生のころの家族写真小学校3年生のころの家族写真